赤武酒造では「浜娘」という、地域に根付いたお酒を醸していました。
地元に人に愛される「浜娘」を絶やすわけにはいかないと、社長の古舘秀峰さんは岩手県内の酒蔵を駆け回り、設備を貸してくれる酒蔵を見つけ、やっとの思いで浜娘の生産を続けることに成功しました。
そして、2013年に震災復興プロジェクトの支援もあり、以前と同じ大槌町にというわけにはいきませんでしたが、念願かなって盛岡市内に新設の蔵を建てることができました。
さらに、この新蔵建設の後、赤武酒造を代表する銘柄"赤武"が誕生するのです。
〜史上最年少杜氏、22歳での挑戦〜
新しい蔵での造りが始まって、一年が経とうとしていた翌2014年、東京農業大学の学生だった社長の長男、龍之介さんが帰ってきました。
龍之介さんは2013年に全国きき酒選手権大会・大学対抗の部にて、東京農大を優勝に導いた立役者。
さらに、短期間、他の蔵で酒造りの現場に携わり、酒類総合研究所の醸造研修を受けての帰蔵でした。
秀峰さんは、その酒類総合研究所での研修時に龍之介さんが造ったお酒を呑んでみて、「なかなかどうして、旨いじゃないか」と驚かれたそうです。
丁度その頃、取引先の酒販店から、「もっとインパクトのある酒が欲しい、浜娘にはそれが足りない」と言われていたそうです。
秀峰さんは、「ならば」と、当時22歳であった龍之介さんを杜氏に任命。
そしてここに史上最年少杜氏、「古舘龍之介」杜氏が誕生したのです。
〜"赤武"誕生とその苦難〜
龍之介さんが醸した新銘柄は、同酒造の名を冠して「赤武」と名付けられました。
杜氏就任一年目に造られた赤武は、父・秀峰さんからすると十分美味しかったそうですが、龍之介さんからすると満足のいく出来ではなかったそうです。
さらに、まだ22歳という異例の若さの杜氏に対する酒販店の反応もまちまちで、その出来栄えを心配する声も少なくはなかったそう。
それでも赤武はその確かな味わいから続々と取扱店が決まり、現在では首都圏を中心に全国区で取り扱われる大きな銘柄となったのです。
2017年現在、赤武が誕生してからまだ4年目と大変若い銘柄でありながら、これまでに数多くの賞を受賞し、その造りのクオリティーは年々上がっています。
パワフルな、若い力で醸される赤武は、意欲的で、才知に富んだお酒です。